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遺言書には、どんな種類があるか?

最終更新日 2019年 06月28日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

遺言の種類は7種類

いざ、遺言書を書こうとしても、どうやって書いたらいいか、わからないこともあるでしょう。

実は、遺言書には、全部で7種類も種類があるのです。

それぞれ有効となる要件が定められており、要件を欠くと無効となってしまい、遺言書を書いた意味がなくなってしまいます。

そこで、ここでは、遺言書の種類を解説していきたいと思います。

遺言は単独の意思表示ですが、遺言の効力が認められるためには、民法に定められた方式に従っていなければなりません。

遺言が法定の方式を具備していない場合には、遺言としての効力は生じません。

遺言には、大きく分けて、①普通方式、②特別方式の2種類があります。

そして、普通方式は、さらに3種類に分かれます。

①自筆証書遺言
②公正証書遺言
③秘密証書遺言

特別方式は、4種類です。

(ア)危急時遺言
①死亡危急者遺言
②船舶遭難者遺言

(イ)隔絶地遺言
③伝染病隔離者遺言
④在船者遺言

遺言のほとんどが普通方式で、普通方式によることができないようなときに、例外的に特別方式で遺言をすることになります。

普通方式遺言は3種類

自筆証書遺言

自筆証書遺言は、遺言者が自筆で遺言を書くことがポイントとなります。

法定の方式に従っていれば効力を生じ、証人や立会人も必要ありません。

自筆証書遺言には、次のようなメリットがあります。

①費用がかからない。
②自分1人で作成できる。
③証人が必要ないので、他人に秘密にできる。

しかし、反対に、次のようなデメリットもあります。

①自分しか知らないので紛失しやすい。
②見つけた人が隠してしまう恐れがある。
③法律の要件を満たさないと、遺言自体が無効になる。
④遺言者の意思能力や本人の意思に基づいたものであるかどうか、など、有効性を争われやすい。

自筆証書遺言が成立するための要件としては、遺言書が次のことを自書することです。

①遺言の全文
但し、2019年1月13日以降に作成する自筆証書遺言については、相続財産の全部または一部の目録を添付する場合、
(ア)財産目録については自書を要しません(パソコン等で作成可)。
(イ)ただし、自書によらない各目録の1枚1枚に署名し、押印する必要があります。
(ウ)各目録の記載がその両面にある場合にあっては、その両面に署名し、押印する必要があります。

②日付
③氏名

そして、これに④押印することで成立します。

自筆証書遺言での注意点は、以下のとおりです。

(ア)自書について

・他人の代筆は無効となります。
・ワープロ、パソコン等での作成は無効です。
・録音や録画による遺言は無効です。
・カーボン紙による複写を有効とした裁判例があります(最高裁平成5年10月19日判決、家月46巻4号27頁)。
・遺言作成時に自書能力が必要とされています。
・視力や体力の問題で自力で筆記できない場合に、他人の添え手の補助を受けたとしても、他人の意思が介入した形跡がないことを筆跡から判定できる場合には、自書として有効とした裁判例があります(最高裁昭和62年10月8日判決、民集41巻7号1471頁)。

最高裁は、次のように判示しました。

自筆証書遺言が「有効に成立するためには、遺言者が遺言当時自書能力を有していたことを要するものというべきである。

そして、右にいう『自書』は遺言者が自筆で書くことを意味するから、遺言者が文字を知り、かつ、これを筆記する能力を有することを前提とするものであり、右にいう自書能力とはこの意味における能力をいうものと解するのが相当である。

したがって、全く目の見えない者であっても、文字を知り、かつ、自筆で書くことができる場合には、仮に筆記について他人の補助を要するときでも、自書能力を有するというべきであり、逆に、目の見える者であっても、文字を知らない場合には、自書能力を有しないというべきである。

そうとすれば、本来読み書きのできた者が、病気、事故その他の原因により視力を失い又は手が震えるなどのために、筆記について他人の補助を要することになったとしても、特段の事情がない限り、右の意味における自書能力は失われないものと解するのが相当である」

(イ)日付について

・何年何月何日なのか、明確に特定が必要です。

遺言をした時に遺言能力を有していたことが必要となること、遺言をした後にその遺言と異なる遺言をしたときは、後の遺言と抵触する前の遺言の箇所は撤回したものと見なされるため、いつ遺言をしたのかが重要となること、などが理由です。

・「2018年3月吉日」は、特定できず、無効となります。

・「2018年の私の誕生日」は、特定できるので、有効です。

(ウ)氏名について

・遺言者を特定できるのであれば、通称、雅号、ペンネーム、芸名でも有効とされています。

(エ)押印

・三文判は有効です。ただし、実印の方が、遺言者の意思が明確であることを立証しやすいといえるでしょう。

・指印は有効とした裁判例があります(最高裁平成元年2月16日判決、民集43巻2号45頁)。

・花押(図案化された署名の一種)は無効とした裁判例があります(最高裁平成28年6月3日判決、民集70巻5号1263頁)。

花押というのは、署名の代わりに使用される記号・符号をいいます。

・遺言書の署名に押印がなく、遺言書を入れた封筒の封じ目に押印があった事例で、有効とした裁判例があります(最高裁平成6年6月24日判決、家月47巻3号60頁)。

相続法改正により、2020年7月10日以降、法務局による自筆証書遺言の保管制度が設けられます。

公正証書遺言

公正証書遺言は、公証人が関与して作成し、原本が公証役場に保管される遺言です。

次のような手続で作成されます。

①証人2人以上の立ち会いで、遺言者が遺言の趣旨を公証人に口頭で伝えます。
②公証人が口述を筆記します。
③筆記した遺言を公証人が遺言者および証人に読み聞かせ、または閲覧させます。
④遺言者および証人が筆記の正確なことを承認し、署名・押印します。
⑤公証人が方式に従って作成したことを付記して署名・押印します。

実務では、上記①②③については、遺言者が遺言の案文を事前に公証人に交付し、これに基づいて公証人と打ち合わせをして内容を確定させ、公証人が事前に証書を作成しておいて、公正証書作成当日に、遺言者および証人に読み聞かせる、という段取りで作成されることが多いです。

遺言の公正証書は、3通作成され、原本は公証役場に保管され、正本と謄本は遺言者等に交付されます。

公正証書遺言の原本は公証役場に保管されており、遺言者死亡後は、利害関係人は、遺言の有無を検索することができます。

公正証書には、次のようなメリットがあります。

①公証人が関与して作成されることから、遺言者の意思に基づいて作成されたことを証明しやすい。

②原本が公証役場に保管されることから紛失・偽造・改ざんのおそれがない。

③家庭裁判所の検認の手続が不要。

反面、次のようなデメリットがあります。

①遺言の内容が証人と公証人に知られてしまう。

②作成手数料がかかる。

被相続人が公正証書遺言を作成していたかいなかがわからないことがあります。

そのような場合には、公証役場で遺言書の有無等を検索できるシステムがあります。

平成元年(1989年)以降に作成された公正証書遺言についてですが、日本公証人連合会において、全国的に遺言者のデータ(氏名、生年月日、公正証書を作成した公証人名、作成年月日など。ただし、遺言内容は含みません。)をコンピュータで管理しています。

最寄りの公証役場に行くと、これらを検索することができます。

ただし、申請できるのは、相続人等の利害関係人に限られます。

また、相続開始前は推定相続人であっても何らの権利が発生していないので、申請できません。

遺言検索システムを利用するには利害関係を証明しなければいけないので、除籍謄本、戸籍謄本、自分の身分証明書等が必要となります。

秘密証書遺言

秘密証書遺言は、遺言の内容を誰にも知られたくないときに利用されます。

次のような手続で作成されます。

①遺言者が、遺言書を作成し、自ら署名・押印します(自書である必要はなく、ワープロでも、他人の代筆でも許されます。また、日付は不要です。)。

②遺言書を封じ、遺言書に用いた印章で封印します。

③遺言書の入った封書を公証人1人および証人2人以上に提出し、自己の遺言書であること、ならびに遺言書の筆者の氏名・住所を申述します。

④公証人が、遺言書提出日と遺言者の申述内容を封書に記載します。

⑤遺言者・証人・公証人が封書に署名・押印します。

上記の③において、「筆者」を申述することになっていますが、「筆者」は必ずしも遺言者本人とは限りません。

「筆者」とは、遺言内容の記載を行った者のことです。

したがって、遺言者が遺言書の文章を含めて遺言書の作成をほぼすべて他人にゆだねて、当該他人がワープロを操作して遺言書本文を入力・印字した場合は、ワープロを操作して遺言書本文を作成した者が「筆者」となります(最高裁平成14年9月24日判決、家月55巻3号72頁)。

なお、秘密証書遺言が上記の要件を備えていない場合であっても、自筆証書遺言の要件を備えている場合には、自筆証書遺言として有効となります(民法第971条)。

特別方式は4種類

自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言の3つの普通方式の遺言が不可能あるいは著しく困難な場合には、特別方式での遺言が用意されています。

特別方式には、

①死亡危急者遺言

②船舶遭難者遺言

③伝染病隔離者遺言

④在船者遺言

があります。

例外的な方式なので、特別方式の遺言は、遺言者が普通方式によって遺言ができるようになった時から6ヵ月間生存すれば、遺言の効力を失います(民法第983条)。

したがって、再度普通方式により遺言をすることが必要となります。

また、特別方式の遺言は、遺言作成後一定期間内に家庭裁判所の確認を受けないと、遺言者死亡時にその効力を生じません(民法第976条4項、第979条3項)。

(一)死亡危急者遺言

疾病その他の事由により死亡の危急に迫った者による遺言です(民法第976条)。

次のように作成します。

①証人3人以上が立ち会う。

②遺言者が、証人のうちの1人に遺言の趣旨を口授する。

③口授を受けた証人が口授内容を筆記して、遺言者および他の証人に読み聞かせ、または閲覧させる。

④各証人は、筆記の正確なことを承認した後に、署名・押印する。

⑤遺言の日から20日以内に、証人の1人または利害関係人から請求して家庭裁判所の確認を受ける。

(二)伝染病隔離者遺言

伝染病のため行政処分によって交通を断たれた場所にいる者による遺言です(民法第977条)。

次のように作成します。

①警察官および証人1人以上が立ち会う。

②遺言者は、自ら遺言書を作成し(代筆も許される)、遺言者、筆者(いる場合)、警察官、証人が各自、遺言書に署名・押印する。

署名・押印できない者がいる場合は、警察官または証人がその事由を付記する。

(三)在船者の遺言

船舶中にいる者による遺言です(民法第978条)。

次のように作成します。

①船長または事務員1人および証人2人以上が立ち会う。

②遺言者は、自ら遺言書を作成し(代筆も許される)、遺言者、筆者(いる場合)、立会人、証人が各自、遺言書に署名・押印する。

署名・押印できない者がいる場合は、立会人または証人がその事由を付記する。

(四)船舶遭難者の遺言

船舶が遭難し、その船舶中で死亡の危急に迫った者による遺言です(民法第979条)。

次のように作成します。

①証人2人以上が立ち会う。

②遺言者が遺言内容を口頭で述べる。

③証人が遺言の趣旨を筆記し、署名・押印する。

④証人の1人または利害関係人から遅滞なく請求し、家庭裁判所の確認を受ける。

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