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遺言執行者は、何をする人か?

最終更新日 2019年 06月28日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

遺言は、遺言者が自分の死後のことについて記載するものです。

その効力は、遺言者の死亡により生じます。

しかし、遺言の効力が生じるときに、遺言者は死亡している、とすると、誰がその遺言の内容を実現するのでしょうか。

遺言の内容を実現するために、遺言事項を執行する必要がある場合があります。

たとえば、「相続させる」旨の遺言の場合には、相続した相続人が単独で申請することができるとされています(不動産登記法第63条2項、昭和47年4月17日民事甲1422号民事局長通達)。

しかし、遺言で誰かに不動産を遺贈する旨が定められている場合には、受遺者は単独では所有権移転登記手続をすることができないので、誰かが手続をしなければなりません。

また、遺言認知の場合には戸籍への届出が必要となります。

このように、遺言事項を執行するため、「遺言執行者」が必要となります。

遺言執行者は、相続人の代理人とみなされています(民法第1015条)。

遺言執行者の就職・退職について

遺言執行者を選任する手続は、以下の3種類です。

①遺言者が遺言で指定する

②遺言者が遺言で第三者に遺言執行者の指定を委託し、第三者が指定する

③利害関係人(相続人、受遺者、相続債権者など)が家庭裁判所に請求し、家庭裁判所が選任する

遺言執行者は複数でもよく、法人を選任することもできます。

ただし、未成年者および破産者は遺言執行者になることができません(民法第1009条)。

遺言執行者に選任された者は、遺言執行者に就職するか辞退するかを相続人に対して意思表示します。

遺言執行者に就職する義務はありません。

相続人その他の利害関係人は、遺言執行者に指定された者に対し、相当の期間を定めて、遺言執行者への就職を承諾するかどうかを確答すべき旨の催告をすることができます。

この場合に、相当の期間内に確答がないときは、遺言執行者への就職を承諾したものとみなされます(民法第1008条)。

遺言執行者は、正当な事由があるときは、家庭裁判所の許可を得て辞任することができます(民法第1019条2項)。

遺言執行者がその任務を怠ったとき、その他正当な事由があるときは、利害関係人(相続人、受遺者、相続債権者など)は、その解任を家庭裁判所に請求することができます(民法第1019条1項)。

遺言執行者の権利義務は?

遺言執行者は、相続財産の管理その他遺言の執行に必要な一切の行為をする権利義務があります(民法第1012条1項)。

そして、遺言執行者がある場合には、相続人は、相続財産の処分その他遺言の執行を妨げる行為をすることができません(民法第1013条)。

この規定に違反して、相続人が相続財産を処分した場合には、その処分行為は無効とされています(大審院昭和5年6月16日判決、民集41巻3号474頁)。

この場合には、受遺者は、登記なくして第三者に対抗することができます。

2019年7月1日以前にされた遺言については、次のとおりとなります。

① 遺言執行者がいる場合には、相続財産の処分その他相続人がした遺言の執行を妨げるべき行為は無効です。ただし、善意(遺言執行者がいることを知らないこと)の第三者に対抗することができません。

② ①は、相続債権者または相続人の債権者が相続財産についてその権利を行使することを妨げないこととされています。

遺言執行者は、就職を承諾したときは、ただちにその任務を行わなければなりません(民法第1007条)。

そして、遺言執行者は、遅滞なく、相続財産の目録を作成して、相続人に交付しなければなりません。

また、遺言執行者は、相続人の請求があるときは、その立ち会いをもって相続財産の目録を作成し、又は公証人にこれを作成させなければなりません(民法第1011条)。

遺言執行者の任務とは?

遺言執行者は、やむを得ない事由がなければ、第三者にその任務を行わせることができません。

ただし、遺言者が遺言に反対の意思を表示したときは、やむを得ない事由がなくても、第三者にその任務を行わせることができます(民法第1016条)。

しかし、専門知識等の関係で、遺言執行の任務を法律家等に行わせることが適切であることも多いことから、改正相続法では、遺言執行者の復任要件を緩和しました。

2019年7月1日以降に作成された遺言については、次のとおりとされます。

(1) 遺言者が遺言で反対の意思表示をしていない限り、
(2) 遺言執行者は、自己の責任で第三者にその任務を行わせることができます。
(3)(2)の場合において、第三者に任務を行わせることが「やむを得ない事由」によるときは、遺言執行者は、第三者の選任および監督についての責任のみを相続人に対して負担します。

なお、遺言執行者が複数人である場合には、その任務の執行は、過半数で決します。

ただし、遺言者が遺言でこれと異なる意思表示をしている場合には、その意思に従うことになります。

遺言執行の費用・報酬

遺言の執行に関する費用は、相続財産の負担となります。

遺言執行の費用というのは、検認や相続財産の管理に関する費用、遺言執行者の報酬などです。

ただし、これらの費用によって遺留分を減ずることはできません(民法第1021条)。

たとえば、相続人が甲1人である場合に、1000万円の相続財産があるところ、そのうち800万円がAに遺贈されたとします。

そして、遺言執行者乙が執行費用100万円を支出したとすると、甲がこの100万円の支払義務を負担します。

この場合の甲の遺留分は、500万円です。

甲は200万円を相続しており、500万円から200万円を差し引いた300万円を遺留分としてAに請求できますが、執行費用100万円を支払っていることから、その100万円も請求しなければ取得額が500万円になりません。

そこで、甲はAに対し、300万円+100万円の合計400万円をAに対して請求できる、ということになります。

相続税における扱い

相続税法で債務控除の対象となるのは、被相続人の債務で相続開始の際に現に存するものです(相続税法第13条1項1号)。

したがって、遺言執行費用は相続税の計算上、債務控除の対象とはなりません(相続税基本通達13-2)。

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