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遺留分侵害額請求権(相続法改正)

最終更新日 2019年 02月10日
監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所 代表社員 弁護士 谷原誠 監修者:弁護士法人みらい総合法律事務所
代表社員 弁護士 谷原誠

遺留分侵害額請求権への変更

相続法改正前においては、遺留分減殺請求権を行使すると、遺留分減殺請求権の行使者の遺留分を侵害する限度で遺贈等の効力が失効し、その限度で、遺贈等の目的財産についての権利が遺留分権利者に帰属しました。

これを「物権的効果」といいます。

これに対し、受遺者または受贈者は、遺贈等にかかる現物を返還することにかえて、遺留分侵害額の価額弁償をすることができることとされていました。

しかし、遺留分権利者の側から積極的に価額弁償を選択することはできませんでした。

しかし、遺留分減殺請求権は、遺留分権利者の生活保障や最低限の相続分の確保などが目的であり、そのためには、必ずしも物権的効果を生じさせる必要はありません。

そこで、改正相続法では、遺留分権を行使することにより、受遺者等に対し、遺留分侵害額に相当する金銭の支払いを請求することができることになりました(民法第1046条1項)。

これを「遺留分侵害額請求権」といいます。

要は、物権的効果を生じさせるのではなく、金銭債権を生じさせることにしたものです。

負担の順序

遺留分侵害額請求権が行使されたときの受遺者または受贈者の負担の順序は、次のように定められました。

①受遺者と受贈者がいるときは、受遺者が先に負担する。

②受遺者が複数いるとき、または複数の贈与が同時にされたときは、受遺者または受贈者がその目的の価額の割合に応じて負担する。

ただし、遺言者が遺言にこれと反する意思表示をしたときは、その意思に従う。

③受贈者が複数あるときは、後の贈与から順次前の贈与の順で負担する。

支払期限の許与

遺留分侵害額請求権が金銭債権となったことから、受遺者等がただちに金銭を用意できない可能性が出てきました。

そのため、裁判所は、受遺者または受贈者の請求により、遺留分侵害額請求権の行使により負担する債務の全部または一部の支払について、相当の期限を付与することができることとされました。

遺留分算定のための財産の価額

生前贈与があった場合の遺留分算定のための期間制限について、改正前は、相続人に対する特別受益として贈与された財産については、贈与時期にかかわらず、全て遺留分算定の基礎財産に算入することになっていました(民法第1044条、903条)。

しかし、改正相続法では、次のように定められました。

①相続人に対する生前贈与については、特別受益に該当する贈与であり、かつ、相続開始前10年間にされたものに限り、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入する(民法第1044条3項)。

ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与した場合には、10年より前にされたものであっても、遺留分算定のための財産の価額に算入する(同条1項)。

②相続人以外の者に対する生前贈与については、相続開始前の1年間にされたものに限り、その価額を遺留分を算定するための財産の価額に算入する。

ただし、当事者双方が遺留分権利者に損害を加えることを知って贈与した場合には、1年より前にされたものであっても、遺留分算定のための財産の価額に算入する。

次に、負担付贈与の場合には、その目的の価額から負担の価額を控除した額を遺留分算定のための財産の価額に算入する、とされています(民法第1045条1項)。

不相当な対価による有償行為がなされた場合は、当事者双方が遺留分権利者に損害を与えることを知ってしたものに限り、当該対価を負担の価額とする負担付贈与とみなし(同条2項)、対価を控除した残額が、遺留分算定のための財産の価額に算入されます。

遺産分割の対象となる財産がある場合の算定方法

改正相続法では、遺産分割の対象財産がある場合(既に遺産分割が終了している場合も含む)には、遺留分侵害額の算定をするにあたり、遺留分権利者の具体的相続分に応じて遺留分権利者が取得する遺産の価額を控除する、とされています。

具体的な計算方法は、次のとおりです(民法第1046条2項)。

(遺留分について)
遺留分=遺留分を算定するための財産の価額×民法第1028条各号に掲げる遺留分率×遺留分権利者の法定相続分

(遺留分侵害額)
遺留分侵害額=遺留分―遺留分権利者が受けた特別受益―遺産分割の対象財産がある場合には具体的相続分に応じて取得すべき遺産の価額(ただし、寄与分による修正は考慮しない)+第899条の規定により遺留分権利者が承継する相続債務の額

(六)債務の消滅があった場合
改正相続法では、遺留分権利者から遺留分侵害額請求権の行使を受けた受遺者等が、当該遺留分権利者の負担する相続債務について免責的債務引受、弁済その他の債務を消滅させる行為をした場合には、消滅させた相続債務の限度において、遺留分侵害額請求権の行使により受遺者等が負担する金銭債務の消滅を請求できることとされています。

この規律は、2019年7月1日より施行されます。

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